花橘52号 連載(5) 間瀬勝一さん(60期)、遠藤ふき子さん(61期)、吉田孝古麿さん(50期)

2001年度の先輩セミナー

①6月28日(木)3校時 14組
 篠崎孝子さん(45期)有隣堂会長
②6月29日(金)6校時 15組
 小泉正昭さん(54期)TBS記者、アナウンサー
③9月12日(水)3校時 13組
 梅沢慎司さん(54期)小学館専務取締役
④10月4日(木)6校時 17組
 瀧井敬子さん(62期)東京藝大助手、音楽評論家
⑤10月23日(火)6校時 16組
 間瀬勝一さん(60期)テアトルフォンテ館長、舞台監督
⑥10月31日(水)6校時 12組
 遠藤ふき子さん(61期)NHKアナウンサー
⑦11月6日(火)6校時 11組
 吉田孝古麿さん(50期)合唱団指導者



間瀬勝一さん(60期、テアトルフォンテ館長、舞台監督)

  今日のセミナーで、高校で何をしたらいいのか、そのヒントを少しでも示すことが出来ればいいと思います。
 平沼の頃は演劇部で、2・3年生時は部長でした。演劇、ダンス、コーラス等の手伝いを佐藤一夫先生(当時の音楽の先生、平沼の高い芸術教育を確立した)に言われ、部室と音楽室を行ったり来たりしていました。その頃から県立音楽堂とか青少年センターに出入りする経験を積みました。その後、藤沢市民センターで舞台の裏方を20年以上務め、やがて横浜市文化事業財団に移りました。つまり、高校時代に演劇部でやっていたことを、今も同じようにやっているということです。自分の趣味で生きているわけです。そのベースは平沼の3年間で出来たのです。
 私には、TV、映画より生の人間と生の人間との緊迫感の方がずっといい。記録性のあるものよりはね。TVで一番よくないのは、劇場中継です。生の舞台はそれだけいいのですよ。ライブもいいものです。最近、久保田さんのライブを聴きに行って涙が出ましたよ。
  みなさんのご両親が日常的に舞台を観に行くような感覚が、日本でも育つといいなあといつも思います。21世紀には無理かもしれない。22世紀になるかもしれないですね。日本人のソフト面での改造が必要だからです。それを理解する人を何人作れるかのかが、私の仕事だと考えています。
  横浜市文化事業財団の中の泉区区民文化センターについて少しお話ししましょう。市が100%出資の財団で、16の文化施設の管理運営をしています。私はそのうちのひとつの館長とチーフディレクターを兼務しています。パンフレットを見てください。各施設、設備の説明が出ています。またおのおのが自主事業をしてもいるのです。いろいろなフェスティバル、ハイスクールフェスティバルなどは横浜アリーナを会場に、高校生をバックアップするイベントです。それからジャズプロムナード、コンテンポラリーダンス、フランス映画祭等も企画されています。テアトルフォンテは演劇専門の区民文化センターなのです。お客様を創る、観客を創る、つまり舞台芸術の日常化というのが私の仕事です。具体的に言いますと、森下洋子さんがバレエ活動50周年ということで、あちこちで演じられておられますが、いつも満席なんです。ご主人の清水哲太郎さんに、「本当の客なのか?」と問うこともあります。95%の客はバレエ団の教室の関係者が集まっている。ところが、ヨーロッパあたりでは、客がぶらりとやってくるのです。

  ❋実物投影機にて、テアトルフォンテのワークショップの紹介。猫走る(小学館)、森下洋子公演、舞台美術展の紹介、「象を放つ」ワークショップ等。

 さて、ところで皆さんはコミュニケーションが下手だと思うのですよ。相手に納得してもらうということが苦手ですよね。演劇というのは、そのためにはとても良い材料なのです。日常語でのコミュニケーションが演劇なんです。創る過程でのコミュニケーションがあり、人前でものが言える調練にもなる。欧米ではディベートが教育の基本です。相手の立場に立っての議論。一度コミュニケーションが成り立つ場に参加してみませんか。大学を卒業して社会に出たときに、それは生きると思いますし、何と言っても、面接で大いに生きますよ。自分を表現する力は大切です。ぜひこのワークショップに参加してみてください。それから、人と人との出会いを大切に。今回もそうです。何と言っても平沼の先輩、後輩なんですからね。 そして、とにかくよく観ること、一生懸命よく観ること。私は月に8本位は舞台を観に行くのですよ。今日もこれから出向く予定です。いろんなジャンルを観ましょう。
 時間になりました。高校時代にやっていたものを今でも続けているという先輩でした。



遠藤ふき子さん(61期、NHKアナウンサー)

  皆さんこんにちは。遠藤ふき子です。私はいつもドキドキしないのに、今日は後輩の前でちょっとドキドキします。放送関係に興味のある人、「ラジオ深夜便」を知っていますか?夜中起きている人は、来週の月曜日の「ラジオ深夜便」を聴いてみてください。私が担当です。
  徹夜でする仕事に就くことになろうとは、夢にも思いませんでした。
  今日は放送で使ったシート表を持ってきました。これで1時間分です。このたった1枚で1時間進行しなきゃいけないのですよ。生放送なんです。朝の6時までなんです。つなぎは全部自分で考えるんです。失敗することもあります。こんなことがありました。水俣病について、心にしみるいい話がありました。そして、話の終わった後で、私はつい口にしたのです。「明日もこのお話をお楽しみに」。もちろん、不適切な発言との電話がありました。番組の担当者が、本人(私)があまりに心に深く感じたので、ついそのような発言になった、と誠意を尽くして対応したので事なきを得ました。言葉遣いは大切です。いったん話された言葉は、消しゴムでは決して消せないのです。
 平成2年にこの番組は始まったのです。「母を語る」というのは私が独自に作っているコーナーです。例えば、ピアニストの山下洋介さん。ピアノでプロになると母に言うと、母は涙。音大に進むことを約束し、認めてもらった。結果的には基礎からクラシックを学び、後に音楽の糧となったことをお話になりました。桂三枝さん。母一人、子一人だということで、運動会に無理をして新しい靴を買ってもらったのにビリになり、恥ずかしかったこと。高校2年まで母と手をつないで歩いていたこと。落語家になったのも、母は仕事でいつも一人で寂しいので、友だちを帰さないように面白い話をしてつなぎ止めた。それが落語家になった原点だとお話になりました。この「母を語る」は2部の本になっています。学校の図書館に置きますね。
 (10月26日放送のテープを聴きながら)ゆったりしたテーマ曲でしょう。百万もの方が午前4時頃にこの番組を聴いているのです。中には高校生や、サラリーマンの方もいるんです。「ラジオ深夜便」はテキストにもなっていますし、交流会などもあるんです。
  こんなお便りが番組に届きました。長野からのお便りです。「難病ALSで、文字盤を使って書いています。人工呼吸器を付けているので、動くのは目と頬と足先だけです。
 ラジオはNHK第1だけ聴いています。あとどれくらい生きられるか分かりませんが、ずっと聴き続けます。」
  こういうお手紙をいただくと、じんとしてしまいます。
  昭和41年にNHKに入り、平成元年にやめて、都合23年間NHKにいました。
 平沼時代は、水泳部でした。健康な体はその頃に作られたのだと思います。「百周年記念誌」にその頃のことを記載しました。
 NHKの面接試験の時、あと何年勤めますかと聞かれ、3年ですと答えました。仕事はますます面白くなり、女の人は結婚したら仕事はやめるという社会風潮もありましたが、子供を2人育てつつ仕事は続けました。思いがけなくも、勤務23年目に、夫がドイツへ転勤となりました。子供は小6と小4。本当に迷いました。私は何のために結婚し、家庭を作ったのだろうかと考えました。そして、管理職になるより新しい環境に飛び込むことを選びました。1989年、ドイツへ行きました。そうです、ベルリンの壁が開いた年です。世界が目の前で変わっていく。私たちはボンにいました。ベルリンとは600㎞も離れていましたが、バナナがスーパーからなくなったり(東にはバナナがなかったんですね)、中古車がなくなったりしました。記者は大忙しとなりました。「そうだ、遠藤さんがドイツにいる。連絡を」。そして、ドイツから私が中継という形になったのです。
  やりたい仕事というのは、強い気持ちを持つことで開かれると私は思います。ここで、下の息子のことについてお話しします。勉強ぎらいの子でした。ドイツではブリティッシュスクールへ入りました。英語が好きになりました。中2の時、帰国しました。英語以外はひどい成績でした。3と2ばかり。それでも何とか横浜の公立高校に入りました。進学はしないつもりだと言っていました。弓道部で一生懸命活動しました。(いよいよ進路決定の頃)「大学に入ったら、弓道が続けられるよ」との一言で、方針変更。高3から塾へ。猛勉強。勉強が面白くなり、国立大学へ。弓道という好きなことをやることで大学進学を果たしたのです。高校時代に好きなことを徹底してやることで、道は開かれると思います。
 高校時代の32組の文集にこう書きました。
 「(卒業に当たって)未来の扉を開く鍵は自分の手の中にあり。」
 平沼時代に考えたことを今も実践しているのです。


吉田孝古麿さん(50期、合唱指導者)

  発声練習はさておき、すぐに始めましょう。モデル合唱団は本日は、茅ヶ崎の小学校のPTAのコーラス団「アンサンブル・プラムべリー」です。ポップス専門に歌っています。いわば、皆さんのお母さんの世代の方に来ていただきました。それでは、ソプラノ、アルトに分かれてください。曲はKiroroの「ベストフレンド」です。
   ❋全員に吉田さんが編曲された楽譜が配られ、生徒全員と合唱団の皆さんによる合唱が作り出された。

2021年11月30日|公開:公開