花橘54号 連載(5) 先輩セミナー2003 中島陽一さん(50期) 声楽家 村川静香さん(92期)ピアニスト

先輩セミナー2003

―魅力と特色プラン委員会―

開催日および講師紹介

①9月23日(土)
 内海 功さん(90期)慈恵医科大学病院麻酔科医
②10月18日(土)
 濱野 穆さん(54期)産婦人科医・高齢者福祉
 安部 治子さん(91期)助産師
③10月18日(土)
 小川高義さん(71期)横浜市立大学助教授・翻訳家
④11月15日(土)
 篠崎孝子さん(45期)有隣堂会長
⑤11月15日(土)
 中島陽一さん(50期)声楽家
 村川静香さん(92期)ピアニスト
⑥12月6日(土)
 佐分利昭夫さん(50期)九州工業大学講師


中島陽一さん(50期、声楽家)

 今から50年前に平沼を卒業しました。合唱部とテニス部に入っていました。男子の1期生で女子に混ざり男子が隅の方にちょこちょこといるような学年でした。東京藝術大学を受験し1年目は3次試験の苦手なピアノで落ち、2年目で合格しました。今日は「歌う立場でどんな風に作曲家は曲を作るのか」のお話をします。
 日本語のアクセントは言葉の語尾が上がったり下がったりします。作曲家は詩とメロディーをうまく融合させて曲を作っています。北原白秋の詩に山田耕筰が曲をつけた「この道」「からたちの花」という歌があります。「この道」は『アカシアの花が咲いている』『あの丘はいつかきた丘…ほら白い時計台だよ』の詩からわかるように札幌が舞台になっています。山田耕筰は多くの曲を作っていますが日本語を大事にした人です。(「この道」と「からたちの花」を歌う」)
 この2曲は山田耕筰の代表曲ですが日本語のアクセントに曲が大体合っています。
 また、白秋の詩に中山晋平と山田耕筰の2人の作曲家が曲をつけた「砂山」という曲があります。中山晋平は荒々しい日本海のイメージを出し、山田耕筰は寂しいイメージを出しています。(2曲の「砂山」を歌い比べる)
 歌では表現できない事を伴奏で表現するものがあります。シューベルトの「冬の旅」の5番目の曲の「菩提樹」は、前奏八小節は泉から水が湧き出している様子を、詩の中で帽子を吹き飛ばす風の部分では激しい風を、それぞれ三連符で表しています。(「菩提樹」を歌う)
 「ます」では前奏で綺麗な川で泳いでいる鱒を表し、3番の漁師が鱒を釣り上げる場面では川を濁して魚を釣った漁師に対しての詩人の怒りを表しています。(「ます」を歌う)
 このように伴奏も非常に大切な役割を果たしています。
 金子みすず作詞の「私と小鳥とすずと」「星とたんぽぽ」の作曲者の中田喜直は日本語を大切にした作曲家で、この2曲も日本語を大事に作っていて1番と2番でリズムやメロディーが違います。(「私と小鳥とすずと」「星とたんぽぽ」を歌う)
 作曲家は詩が持っているもの、詩人が考えていることをメロディーに表そうとしています。

伴奏 村川静香さん(92期)

 (中島さんは配布プリントを参照にしながらバリトンの美しい歌声で歌われました。また村川さんの美しく優しいピアノ伴奏もとても魅力的で印象に残りました。)

【生徒の感想】

  • 私はこの講義を受けて、とにかく、日本人の作曲家は、曲を作るうえで、日本語を大事にしていたということを一番学びました。
     それにしても、声楽家ということで、すごく歌が上手でした。特に、声の強弱の付け方がすごくうまくて感動しました。私も、あんな風に声が出せたらなぁと思います。
     曲の説明を受けていて、一番印象に残った「砂山」。同じ作詞なのに、まったく曲調の違う二つの曲があるのには、びっくりしました。曲を作る人が違うだけで、こんなにも変わってしまうと、歌詞の持つ意味も少しずつ違って見えてくるくらい、興味深い一曲でした。
     最後に今回のテーマは「歌」だったけれども、私は、ピアノもとても上手だったと思います。そのピアノが、いっそう「先輩」の声をひきたてていて、とても良い勉強になりました。

  • 私たちも少しはなじみのある曲を、プロの方に目の前で歌ってもらったのは初めてだったので、とても感動しました。また、高い音をのばしていた部分は、鳥肌が立つくらいゾクゾクするような状態になっていました。
     今回のセミナーで、今まで知らなかった世界を少し学ぶことができたと思います。特に「砂山」は、作曲者が違うと、詩のイメージの受け方が違い、曲全体の印象が全く変わってしまうことを知り驚きました。私のイメージとしては、中山晋平さんの曲が詩と合っていると思いました。「砂山」のことから、私たちは曲のイメージと詩のイメージを同じものと感じることが多いと思うけれど、少し違うのではないかと思いました。
     今思うと、あの時寒かったので、「気温は歌声に影響しないか」と質問してみればよかったと思いました。せっかくの機会だったのに残念です。
     私のピアノの先生も声楽家で、発表会ではいつもすばらしい歌声を聞かせてくれます。でも、男性声楽家の歌声は初めて聞きました。低く太いのかと思っていたら、高い音もとてもきれいに歌っていて、何オクターヴ出るのかと思いました。これも聞いてみればよかったと思いました。
     聞き終わってからは、自分ものっていて楽しめたという満足感でいい気分でした。劇場などで終わった後も動けないような状態だと思います。
     自分の体だけで人を感動させられるということは本当にすばらしく、なかなかできないことだと改めて感じることができました。

2021年06月29日|公開:公開