花橘55号 連載(2)先輩セミナー 間瀬勝一さん(60期)横浜市芸術文化振興財団

先輩セミナー2004
―魅力と特色プラン委員会― 

開催日および講師紹介

① 6月19日(土)
 池田達郎さん(63期)ドキュメンタリー映画監督
② 6月26日(土)
 間瀬勝一さん(60期)横浜市芸術文化振興財団
 エグゼクティブディレクター
③ 7月3日(土)
 枝元なほみさん(70期)料理研究家
④ 7月10日(土)
 神山 明さん(68期)東海大学教養学部芸術学科教授
⑤ 9月11日(土)
 堀 潤さん(93期)NHKアナウンサー


間瀬勝一さん(60期、横浜市芸術文化振興財団)
エグゼクティブディレクター

 間瀬と申します。 百周年の記念事業の際には、舞台監督を務めました。この新しい校舎に入り、古い3階建ての校舎のことを思うと、まさに隔世の感がします。
 最近、驚くような殺人事件や人を傷つける事件が目立ちます。一体、何が欠落しているのか。演劇などの舞台芸術が、みんなの心にスペースを持っていないことに原因があるのではないかと思います。
 日本が戦争に敗け、その戦後の時代は食べる物もなく、着る物を売って生活していました。食べていくことだけで精一杯でした。政府は、歌謡音曲はいかがなものかという制限をしていました。一方、同じ敗戦国であるドイツでは、まず最初におこなったのがオペラハウスの復興でした。荒廃した国土の中で、彼らがしたのは、心の豊かさを共有しようということでした。ここに日本とドイツの違いがあります。舞台芸術を、彼らは、生活の一部として位置づけているのです。日本も、江戸時代は文化芸能の華が開きました。しかし、特に昭和に入って、文化が押しやられました。現在も、それに近いものがあります。
 この舞台芸術が日本人の中に大きな位置を占めてほしいと思いながら、40年が経ちました。20世紀を、物を作る時代とすれば、21世紀は、文化の時代、心の時代。文化芸術に親しんで、豊かな心を持ってもらいたいと思います。
 「演劇の日常化」、これは私の人生のミッション、達成目標です。40年前から、高校演劇の「裏」をお手伝いしてきましたが、これで終わりにしてほしくないと思っています。演劇、音楽、絵画、映画などを見に行く、それを誰かと共有する、内容についての話を交わす、そこからコミュニケーションが生まれてきます。欧米では、ベビーシッターを頼んで、奥さんと二人で観劇したり、パーティーに出かけたりすることが成り立っています。夫婦で行くことが、日常生活の中にあるのです。
 そうした演劇を、何とか学校教育の中に取り入れられないか。演劇は人と人とのコミュニケーションを基盤としているだけに、学級崩壊などということが言われる今、演劇的手法によって、学校の中でも展開できたらと思います。
 出会いを大切にして、感動すること。友と一緒に泣けるということが大切。社会に出ると、その機会はなかなかありません。ぜひ、それを育ててほしいと思います。

【生徒の感想】

 今日のお話で初めて演劇の裏側について知ることができました。今までほとんど無知だったので、少しではあると思いますが知ることができて良かったです。
 また、先輩は演劇の日常化を人生のミッションとしている、とおっしゃっていました。そして、私達にもミッションを見つけてほしい、ともおっしゃっていました。私は、そんな人生のミッションを持つ先輩が素敵だと思いました。私にはまだ私の人生のミッションとは何なのかは分かりません。明日見つかるかもしれないし、2年後、あるいは3年以上後かもしれません。それでも今日のお話を聞いて感じた事は、ミッションを見つけるためにも色々な方向に視野を広げて、何が自分にとって大切か、必要かを敏感に感じとる事が大切だという事です。
「人の一生は短い、ミッションを探して豊かな生活を 出逢いを大切に、よき出逢いを」
 私はこの言葉が好きです。人生のミッションを探すこと、それが今後の、今の私のミッションだと思いました。
2022年01月20日|公開:公開